「群盲象を評す状態」のLPガス制度改革(8月25日号)

LPガス業界人のリテラシー

LPガス業界人のためのリテラシー向上講座 ②
エネルギー事業コンサルタント 角田 憲司

 先日、ある雑誌の座談会で徳島と神奈川のLPガス経営者に省令改正状況を聞いてみた。

「徳島では元々県外からの参入者も少なく、施行後も競争状況は落ち着いている」、「神奈川では施行前に比べると穏やかになっているが、それでも賃貸集合では切り替えが起こっており、現に自社も顧客をロストした」、「三部料金制への移行に関して自社は対応済だが、県内全体の状況は(徳島も神奈川も)わからない」、「神奈川の自社ケースでは、切り替えに際して残存貸与設備の精算はオーナーの買い取りという形で行われているが、切り替えに際してどのようなオーナーインセンティブが支払われているかはわからない」ここまでは業界マスコミでも報じられることと合っており、皆、違和感がないことだろう。ただしこれが記事化されると、徳島の無風状態より神奈川の「施行後も切り替えが続く状態」の方が前面に出てくるのが常であり、「切り替えが続くということは改正省令違反になる行為が続けられているのだろう」という「認知バイアス」を読者に起こさせるもとにもなっている。

次に「今般の設備貸与禁止について自社の賃貸オーナーは理解してくれたか」と尋ねると、2社とも「ほぼ理解してくれた」と答えた。この2社の説明能力(の高さ)もあるのだろうが、「頑として理解を拒むオーナーが一定数いるのでは」という予測は外れた。だが神奈川では「理解してくれたものの、他事業者の”甘いささやき”によって切り替えてしまうオーナーもいる」とのこと。ただしこのようなオーナーの翻意を促す行為が違法なインセンティブ供与を伴っているかはわからない。

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エネルギー事業コンサルタント 角田 憲司
プロフィール
1978年東京ガスに入社、家庭用営業・マーケティング、熱量変更部門、卸営業などに従事、千葉ガス社長、日本ガス協会地方支援担当理事を経て、現在、コンサルティングなどを行う。
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