ベンリーコーポレーション(愛知県清須市、前田満定社長)では、生活支援サービス事業のトップ企業として全国に約180店舗のフランチャイズチェーン(FC)を展開している。同社が「ベンリー」店舗のFCとして親和性が高いと注目するLPガス販売店の中で、順調に業績を伸ばしているのが宮古ガス(沖縄県宮古島市、富山忠彦社長)だ。

コロナの逆境を好機に
宮古ガスは、1970年の創業からLPガス充填所やオートガススタンドの運営、LPガス供給(約4000軒)などを手がけてきた。沖縄県は好調な観光産業を背景にガスの新規需要も増えているが、全国的には人口減少やガス器具の高効率化などによりガス需要が徐々に減っている状況があり、沖縄県にもいずれ影響が及んでくる。富山社長は2014年に4代目社長に就任してから、「LPガスの一本足打法ではなく、ガスの強みを生かした新たな事業展開が必要ではないかと考え続けてきた」と話す。
そうした中で突如発生したのが、20年の新型コロナウイルス感染症の全国的流行だ。同社も売り上げが大きく落ち込んだが、利益は確保できていた。その利益をどこに投資するか。「他社が守りに入っている時に勝負しないといけない」と、東京で開かれたFC系展示会に情報収集のために行った際に出会ったのがベンリーだった。富山社長はFC事業の話を詳しく聞きながら、ガスを供給するコインランドリーを経営する高齢の店主からフィルター清掃などの日常業務の代行を相談されていたことも思い出し、「新事業の方向性が明確になった」と振り返る。
暮らしのコンビニ
同社ではこれまで、ガスのお客さまから電気や水道などに関する困り事で電話がかかってくることが多かった。対応は専門の修理業者を紹介するだけにとどまっていたが、お客さまから頼られる存在としてのガス会社の強みを新事業として生かすことを決断。「ガスの販売はあくまで手段であって、お客さまの暮らしを豊かにするのがわれわれの仕事」と考え方を転換し、生活全般のお困り事を解決する〝暮らしのコンビニ〟をコンセプトにベンリー宮古島店を22年にオープンさせた。
宮古ガスのブランドは既に地域で広く認知されているため、生活支援サービス事業の開始が受け入れられやすい土壌はあったものの、それだけでは事業運営は安定しない。富山社長は、「社長自身がベンリーを新事業の会社の柱にするという意気込みを社内に浸透させ、社内のリソースを積極的に投入していくこと示すことが一番大事」と強調する。ベンリー店舗の人員は4人体制だが、余力がなくて対応できない場合でも断らず、社内から応援要員を出すと伝えて失敗を恐れず受注するよう、熱心に促し続けた。現在では、宮古ガスで引き合いのあった案件の紹介ではなく、ベンリー店舗で直接受注する案件の割合が多くなっているという。

「有料」に意識変化
一人暮らしの高齢者を中心に、掃除や庭の草刈り、家具の移動、エアコンクリーニング、水回り修理、買い物代行、電球交換など生活全般に関わるサポート内容は、他の地域と変わらない。困り事を解決する接点が増えることで、リフォームなど高額案件の依頼も増えている。新築住宅のガス工事が終わった後の引っ越しを請け負うほか、別荘のガス工事が終わった後、シーズンオフの長期不在中に草刈りなど管理を提案するといったように、ガス事業との連携も深まっている。
またベンリーの料金体系を参考に、これまで無料で対応していたガス関連工事についても料金体系を整備した。ガス事業の社員にも、有料で仕事を受注する意識が高まったという。富山社長は、液石法の省令改正以降、ガスに関連した各種サービスの有料化は業界共通の課題になっていると指摘。「LPガス業界はいずれ価格競争の時代になる。その時に備えて、お客さまに適正価格で請求できる仕組みをつくることがガス会社に今求められている。FCの仕組みを活用して社内に浸透させていけることは、非常に大きなメリットだ」と話す。
富山社長は、賃上げ競争の時代も見据え、「収益を上げて社員に還元する循環をつくらないと人は集まってこないし定着もしない」と話す。ベンリー事業の展開で社内が活気づいていることは外部にも知れ渡り、人材採用も順調だ。ベンリー事業については、今後、外壁塗装や屋根の防水工事といった大型案件を強化し、さらなる収益アップを図る考え。ガス事業の収益性を上げる取り組みも継続することで賃上げも可能になる。富山社長は、収益性の向上による賃上げや人材の定着がサービス品質の向上を促し、最終的にはお客さま満足度の向上へと結び付くと考えている。

