JAエネルギー兵庫、リフォーム店「お湯タロウ」好調

企業動向
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お湯タロウあかし販売所

 JAエネルギー兵庫(神戸市、神谷圭吾社長)は2022年9月、明石市に給湯器&トイレ交換専門店「お湯タロウあかし販売所」をオープンし、リフォーム事業を推進している。同店の商圏はほぼ都市ガスエリアで、立ち上げ当初の地盤はないに等しい状況だったが、売上高は毎年2倍近く伸長しており、近く単年黒字化を達成する見込みで好調だ。

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 同社は県内JAグループのLPガス事業集約の受け皿として、07年に設立した。現在は三田市、加東市、加古川市、朝来市、豊岡市に拠点を構え、約2万8000戸にLPガス供給を行っている。しかし人口減少著しい地域が多い。徐々に減る需要と収益に対して、当時の玉田和浩前社長が「何か新事業を立ち上げよう」と、リフォーム事業に着目。外部のコンサルタントを交えながら、企画を練り上げた。神谷社長は最初からプロジェクトに参加し、今も遺志を受け継いでいる。

 県内6カ所の販売所を起点とし、LPガス顧客を中心としたリフォーム事業の強化も発想としてあったが、コンサルタントから提案されたのは、人口が多い場所で全くの新規開拓での立ち上げだった。必然的に都市ガスエリアでもあり、これまでのLPガス事業で培った顧客層や信頼、ブランドはほとんど寄与しない。それでも「いうとおりやってみよう」と決断した。

 ライバルの少ないエリアマーケティングと出店のための土地探し、リフォーム事業経験者を求める採用活動など、全くのゼロからのスタートだった。これらにめどが立ち、本来なら22年6月にオープンさせる計画だったが、給湯器など住設機器の納期遅延問題の真っ只中という業界にとって最悪の時期だった。ある程度、在庫を蓄えておく必要があったため、オープンを3カ月遅らせた。

他地区での出店も視野
 「お湯タロウあかし販売所」の従業員は、営業・施工担当者3人と事務員1人の4人体制。既存のLPガス拠点からの転属は1人だけで、3人は店の立ち上げにあたり新規採用された。加古彰則所長も新規採用で、リフォーム事業経験を生かし店をけん引する。LPガス拠点なら欠かせない保安員資格者は一人もいない。もともと地盤となるLPガス顧客の地盤がないエリアなので必要ないという。純然たるリフォーム店として運営されている。
 リフォーム事業の立ち上げではあったが、看板は今でも「給湯器&トイレ交換専門店」だ。店に入ればまずトイレがずらりと並び、壁には各メーカーの給湯器を多く掛けている。給湯器という同社の得意分野を生かすこともあったが、リフォームよりももっと身近に感じてもらう需要掘り起こしをスタート地点にしたかったという。売りは「最短30分でかけつけます」で、それをできる限り実行できる範囲を商圏にしている。
 マーケティングは、エリアを変えながら週数回行う新聞折り込みチラシと、年3回は行うイベントを中心としている。最近はOB客向けイベントでのリピーターの増加や、また工事宅の隣近所へのあいさつ回りを欠かさず行い口コミも増えてきた。OB客は最初の仕事は給湯器交換でも、店の取り扱いをしっかり周知することで、コンロ、水栓、キッチンや風呂、洗面台とニーズが広がっていく。OB客管理こそリフォーム事業成功の鍵として徹底している。
 神谷社長は好調に推移する事業について「店のみんなががんばってくれている」と胸を張る。本社から店を支援する営業二部の中作基弘部長は、事務員を務める新免いずみ社員は「スーパー事務員」と絶賛。
 加古所長含める3人は、工事などで店にいないことも多く、新免社員は一元客への対応で、客の話を聞き、ニーズに合った商品を提案し、クロージングまでしてしまう。聞けば前職は歯科衛生士だったそうで、店の近所に住んでいた縁だけで入社した。「ふらっと来店してくれたお客様を担当者につなぐだけでは逃げられてしまうこともある。せっかく来店してくれたのだから、交換する器具の値段だけでも伝えたくて勉強しているうちにこうなった」と笑う。

 同店の成果をもって、県内各エリアで2号店、3号店と増やしていくことも視野に入れている。しかし中作部長は「あかし販売所の好調は良い人材に支えられてのもの。だからこそ他地区でも、いま進めている人材育成をしっかり行って、準備が整ったところから出店したい」と話している。/um_loggedin